一般社団法人日本蛋白質科学会

日本蛋白質科学会は蛋白質に関する科学研究を推進します

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ホーム 日本蛋白質科学会ニュースレター Vol. 26 No. 8

第26回日本蛋白質科学会年会(鳥取) 若手奨励賞受賞者コラム

日本蛋白質科学会ニュースレター Vol. 26, No. 8 (2026) 発行日 2026年9月28日

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本年度第26回日本蛋白質科学会年会(鳥取)における若手奨励賞受賞者の方から原稿をいただきましたのでここにお知らせします(演題番号順)。

日本蛋白質科学会 役員会

若手奨励賞優秀賞 3名

YSA-4 白石 大智(名古屋大学)

白石 大智(名古屋大学)

この度、第26回日本蛋白質科学会年会において若手奨励賞優秀賞を受賞し、大変光栄に存じます。審査員の先生方ならびに年会の運営にご尽力くださった皆様に心より感謝申し上げます。

リボソームはタンパク質合成の中核を担う巨大複合体ですが、その構成や機能は細胞・組織間で均一であると考えられてきました。しかし近年、構成因子や修飾状態の多様性が明らかとなり、「Ribosome heterogeneity」として注目されています。私たちの研究室では、組織間におけるリボソームの多様性を解析するためにSel-TCP-MS法を開発し、精巣特異的なリボソーム結合因子としてTCP11を同定しました。TCP11の欠損が雄性不妊を引き起こすことは既に知られていましたが、その分子機構は不明でした。本研究ではTCP11が新生鎖を凝集から保護する共翻訳的なシャペロンとして働き、精子の正常な運動と機能に不可欠であることを明らかにしました。

本研究の遂行にあたり研究室の皆様をはじめ、田口英樹先生、今見考志先生ほか多くの先生方から多大なるご指導とご支援を賜りました。この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。今回の受賞を励みに、今後もリボソームや翻訳研究の面白さ、奥深さを発信できるようより一層研究に邁進してまいります。

YSA-6 小林 和弘(東京大学)

小林 和弘(東京大学)

第26回日本蛋白質科学会年会(鳥取)におきまして若手奨励賞優秀賞を賜り、誠に光栄に存じます。また、学会の企画・運営、ならびに選考にご尽力くださった皆様に厚く御礼申し上げます。

G蛋白質共役型受容体(GPCR)は細胞外シグナルを細胞内のG蛋白質へ伝達し、多様な生理現象を制御する細胞膜蛋白質であり、医学薬学的にも重要な創薬標的です。従来、X線結晶構造解析やクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子構造解析によりこれらの標的の活性化・不活性化状態の静止構造が示されてきました。しかし、特にG蛋白質は静止構造のみからではその詳細な活性化機構が不明であり、それゆえに作用機序が不明なG蛋白質の病原変異が数多く存在していました。本研究では、クライオ電子顕微鏡を用いた時間分解構造解析により、GPCRがG蛋白質を活性化するサイクルの全貌を可視化しました。具体的には、GPCR–G蛋白質複合体にGDPおよびGTPを添加し、活性化サイクルを回転させた状態で構造解析を行うことで反応過程に現れる中間体を網羅的に捉えました。得られた中間体構造からは従来説明できなかった病原変異の分子基盤に加え、GPCRの反応を制御する新たなホットスポットが明らかとなりました。

本研究を行うにあたり、一切の制限なく自由に研究させてくださった加藤教授、いつも精力的に一緒に研究をしてくださる川上准教授をはじめとした関係者の皆様のご尽力に感謝申し上げます。

YSA-7 相馬 哲兵(東京大学)

相馬 哲兵(東京大学)

このたびは、第26回日本蛋白質科学会年会若手奨励賞優秀賞をいただき、光栄に思います。審査員および学会関係者の皆様に、御礼申し上げます。

ラージセリンリコンビナーゼ(LSR)は、attPとattBという2つのDNA配列間でDNA組換え反応を触媒する酵素であり、長鎖DNAノックイン技術への応用が期待されています。LSRは、(1)attPとattBへの結合と四量体形成、(2)4本のDNA鎖の切断、(3)左右二量体の回転によるDNA鎖交換、(4)DNA鎖の再結合、という複数のステップからなるユニークな機構でDNA組換え反応を触媒します。LSRは1990年代から研究されており、生化学的な研究からDNA組換え機構が提唱されていましたが、DNAと結合した機能的な複合体の立体構造は不明でした。

本研究では、LSRの一種であるBxb1について、クライオ電子顕微鏡を用いて、反応前、反応後、および2つの回転中間体の計4状態の構造を決定しました。その結果、Bxb1が非対称な四量体を形成してattPとattBを識別する仕組みと、平坦な疎水性界面を介して相互作用を保ちながら二量体同士が約180度回転するDNA鎖交換機構を明らかにしました。今後、これらの知見を基に、LSRの反応機構への理解が深まり、長鎖DNAノックイン技術への応用がさらに進むことを期待しています。

本研究は、私が学部4年生で研究室に配属されて最初に取り組んだ研究テーマであり、私の研究活動の出発点となった思い入れの深い研究です。研究を進める中で、複雑な酵素反応を分子構造から理解する構造生物学の面白さを実感しました。最後に、本研究を進めるにあたり、西増教授をはじめ、西増研究室の皆様ならびに共同研究者の皆様には、多大なご指導とご協力をいただきました。この場を借りて、深く感謝申し上げます。

Bxb1の反応機構、Bxb1–attP–attB複合体の構造

若手奨励賞 4名

YSA-1 横尾 尚典(慶應義塾大学)

横尾 尚典(慶應義塾大学)

この度は第26回日本蛋白質科学会年会にて若手奨励賞をいただき、大変光栄に存じます。審査員の先生方をはじめとした学会関係者の皆様に感謝申し上げます。

近年、多くの精神神経疾患や神経障害はシナプスの異常により引き起こされるシナプス病であることがわかってきました。中でもシナプス前後の受容体を架橋する細胞外足場蛋白質(ESPs)は強力なシナプス形成能を持ちます。本研究では、シナプス病への新たな治療薬開発を目指し、VHH抗体をベースとした人工的なESPsの機能調節分子の設計を行いました。

受賞対象の研究は、ESPsを標的とした痒みに対する治療薬の開発です。ESPsの一員であるCbln1は、その過剰なシナプス形成が慢性掻痒を引き起こします。最初にCbln1に対し複数のVHHを取得し、物理化学的解析、構造解析によるスクリーニングから、Cbln1のシナプス後部受容体GluD1への結合を阻害するVHHを見出しました。構造情報を元に設計したVHHベースの分子はin vitroで大幅な阻害活性向上を示し、モデルマウスでは痒みを緩和させる機能を示しました。本研究はシナプス機能調節分子の設計における構造に基づく合理的設計の有効性を示しており、シナプス病に対する新たな治療薬の創出に繋がることが期待されます。

本研究を行うにあたり、津本浩平教授、中木戸誠講師を始めとする東京大学津本研究室の皆様、柚﨑通介教授、松田恵子講師を始めとする慶應義塾大学柚﨑研究室の皆様の多大なるご指導とご助力を賜りました。心より御礼申し上げます。

YSA-2 久保 進太郎(理化学研究所)

久保 進太郎(理化学研究所)

この度は蛋白質科学会若手奨励賞に選出いただき、誠に光栄に存じます。選考にご尽力いただきました選考委員の皆様、ならびに学会運営に携わる全ての皆様に、この場を借りて心より御礼申し上げます。

私の研究は、ATP合成酵素FoF1 ATPaseのエネルギー変換機構を理論的に解明することを目的としてきました。FoF1 ATPaseは、ATPの加水分解やプロトン駆動力を利用したATP合成を高効率に実現する、生体を代表する分子モーターです。

本研究では、実験で測定された角度依存的な反応速度を基盤とし、熱力学との整合性を満たすF1 ATPaseの反応キネティクスモデルを構築しました。このモデルはATP加水分解による一方向回転と、逆方向回転によるATP合成を統一的に再現します。また、加水分解方向では重要視されていなかった短寿命の中間体が、合成方向では本質的な役割を果たすことを明らかにしました。これにより、回転方向がどのように決定されるのかという根源的な問題に対して、熱力学と反応速度論を統合した新たな理解を示すことができました。今後はFoモデルも構築し、FoF1 ATPase全体系の理論モデルの構築を行っていきます。

末筆ではございますが、これまで本質を見据えたご指導を賜りました高田彰二教授ならびに野地博行教授に、心より深く感謝申し上げます。また、日頃より多大なるご支援とご協力を賜りました全ての皆様に、心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

YSA-3 野地 真広(東京科学大学)

野地 真広(東京科学大学)

このたび、第26回年会にて若手奨励賞を賜りました。学会での受賞は初めてということもあり、誠に光栄です。選考および年会運営に携わられた先生方、そしてシンポジウムにご来場くださった皆様に、心より御礼申し上げます。

材料創出などのため人工の蛋白質高次集合体の構築を目指す「蛋白質集合体デザイン」には、いくつかの手法があります。このうち「直感的デザイン」は、既知の蛋白質に対する簡便な改変をベースとし、動的かつ柔軟な集合体の構築に実績があります。これらの特性は天然の集合体にしばしば見られ、よって本手法は生命科学における構成的アプローチとしても有用です。一方、微小管のように複数種の蛋白質から成る、形態多様な集合体は実現していませんでした。

今回、私は直感的デザインに基づきPuuE-M, PuuE-pという2種類の蛋白質を設計しました。負染色TEM法およびクライオEM法から、両者が混合により形態多様な2成分チューブに集合することを明らかにし、かつ塩濃度に依存した可逆性を示すことなどを突き止めました。また、全反射照明蛍光顕微鏡法から、チューブがアクチン線維と同程度の柔軟性をもつことを明らかにしました。

さらに私はPuuE-Mにいくつかの改変を施すことで、チューブの「ツイスト化」や「大径化」「多層化」による形態多様性の拡張にも成功しました。ただし、チューブ長や径の制御、チューブ以外の形態の構築など興味深い課題は山積しており、今後挑戦していきたいと考えております。

本研究は鈴木雄太博士、杉田征彦博士、宮﨑牧人博士ら共同研究者の方々のご尽力なしには遂行し得ず、また賞への応募にあたり寺坂尚紘博士より多くのアドバイスをいただきました。この場をお借りして深く感謝申し上げます。

YSA-5 福永 彩美(東京大学)

福永 彩美(東京大学)

この度は、第26回日本蛋白質科学会年会にて若手奨励賞をいただき大変光栄に存じます。審査をしてくださった先生方をはじめ、学会関係者の皆様、また発表を聞いてくださった方々に心より御礼申し上げます。

生物の社会性行動は、脳内で神経修飾因子とその受容体を介して複雑に制御されています。バソプレシン・オキシトシンという2つのペプチドは社会性記憶や養育行動など多数の社会性行動の制御において中心的な役割を担っており、長年研究が進められてきました。しかし、これらは互いの受容体をも活性化するという性質から、シグナルを切り分けて理解することが難しく、全容理解の障壁となっていました。本研究では、まず構造解析、薬理学的アッセイを行い、両ペプチドのそれぞれに選択的な受容体を開発し、シグナルの切り分けを可能にしました。さらに、その選択的受容体ノックインマウスを用いた行動解析を行うことで、受容体交差活性がどのように社会性行動の制御に関与しているのかを生理的条件下で直接明らかにすることができました。

本研究は修士1年から取り組み、私に研究の面白さを教えてくれた大切なテーマです。遂行にあたり多大なご指導、ご尽力を賜りました加藤英明教授、奥山輝大教授、研究というものを基礎から教えてくださった川上耕季准教授、度会晃行博士をはじめ、共同研究者の皆様、いつもサポートしてくださる加藤研メンバーの皆様に心から感謝申し上げます。

電子メール版ニュースレター発行
日本蛋白質科学会事務支局
E-mail: pssj@nacos.com, URL: https://www.pssj.jp
編集責任者:
⽟⽥ 太郎(量⼦科学技術研究開発機構)
山下 敦子(大阪大学・蛋白質研究所)
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